量子エネルギーテレポーテーション(2)
前回は A の x方向のスピンを測定をしたところまでだった。
測定直後の状態は測定値 α(=±1) に応じて
になる。
ここまでは特に変わったことはない。
この測定値 α を B のところ(にいる人)に古典的な通信手段で送る。通信は十分速く、系の状態は測定直後から変化しないものとする。
送られてきた α の値に応じて、B に次のようなユニタリー操作 を施す。
は B の状態ベクトル空間の単位行列。
この操作でやってることは、要するに、α=1 のときは B を y軸方向の右ねじの向きに 2θ ラジアン回転させ、α=-1 のときは左ねじの向きに回転させるということだ。
θ をうまく選べば、系のエネルギーが減り、そのぶん B を回転させた装置が仕事をされて、エネルギーが取り出せる。
まず、回転後の B の状態ベクトルを求める。添字 B は適当に省略する。
A の測定直後の B の状態は
だから、回転後は
だから、回転後の全体系の状態は
つまり、回転によって、φ だったところが θ+φ になるだけなので、回転後のエネルギー期待値の計算には前回の計算がそのまま使えて
合計して
回転によって最大のエネルギーを取り出すには、これを最小にする θ を選べばよく、そのような θ は
を満たすことはすぐに分かる。 だったから
取り出せる最大のエネルギー は
書き方が違うが、これは論文の(11)式と一致する。