チャンドラセカール限界(2)

前回、縮退物質の状態方程式
\Large P = K\rho^{4/3}
が求まったので、これから星の構造を記述する方程式を求める。

しばらくの間、これを少し一般化して
\Large P = K\rho^{1+\frac{1}{n}} \hspace{215.5pt}(1)
として議論する。
n をポリトロープ指数 (polytrope index) と言う。最初の式は n=3 の場合。

星を球対称として、星の中心からの距離を r、半径 r までに含まれる質量を M とする。
微小体積 ΔV が圧力によって受ける力は  -({\rm grad} P)\Delta V、これを球対称性を考慮して極座標に直すと、r 方向の成分は
\Large -\frac{{\rm d}P}{{\rm d}r}\Delta V
ΔV に含まれる質量は ρΔV だから、これに働く重力は  -GM\rho\Delta V/r^2。星が形を保つためには圧力と重力が釣り合っていなければならない(力学平衡)から
\Large -\frac{{\rm d}P}{{\rm d}r}\Delta V-\frac{GM\rho\Delta V}{r^2}=0
-\Delta V で割って
\Large \frac{{\rm d}P}{{\rm d}r}+ \frac{GM\rho}{r^2}=0 \hspace{200pt}(2)

密度を体積で積分すれば質量だから
 M = 4\pi\int_0^r \rho r'^2 {\rm d}r'
両辺 r で微分して
\Large \frac{{\rm d}M}{{\rm d}r} = 4\pi r^2\rho \hspace{209pt}(3)

これで、3個の未知数 P, ρ, M についての3本の方程式 (1)(2)(3) が揃ったので、方程式を解くことができるのだが、ここで式を無次元化して簡単にする。
ここでは、\rho_c を星の中心の密度として
\Large \rho_c,\; K,\; \frac{4\pi G}{n+1}
の3個から単位を作るのが都合がいい。これらの冪乗を適当にかけて作った長さ、質量、圧力の単位をそれぞれ  R_0,\; M_0,\; P_0 とする。
\Large R_0 = {\rho_c}^{\frac{1-n}{2n}} \left\{\frac{(n+1)K}{4\pi G}\right\}^{\frac{1}{2}} \\ M_0 = {\rho_c}^{\frac{3-n}{2n}} \left\{\frac{(n+1)K}{4\pi G}\right\}^{\frac{3}{2}} \\ P_0 = K {\rho_c}^{1+\frac{1}{n}}
この単位を使って
\Large \xi = \frac{r}{R_0},\; M' = \frac{M}{M_0},\; P' = \frac{P}{P_0},\; \rho' = \frac{\rho}{\rho_c}
となる無次元の量 \xi,\; M',\; P',\; \rho' を導入する。これで方程式を書き直すと
\Large P' = \rho'^{1+\frac{1}{n}} \\ \frac{{\rm d}P'}{{\rm d}\xi} + \frac{(n+1)M'\rho'}{4\pi\xi^2} = 0 \\ \frac{{\rm d}M'}{{\rm d}\xi} = 4\pi\xi^2 \rho'
(実際の計算は、式 (1)(2)(3) で K を 1、G を (n+1)/(4π) で置き換えて、各変数を対応する無次元のものにするだけだ)

かえってややこしくなった気がしないでもないが、さらに
 \rho' = \theta^n,\; M' = 4\pi\omega
となる θ, ω を導入して書き直すと

\Large P' = \theta^{n+1} \\ \frac{{\rm d}P'}{{\rm d}\xi} + \frac{(n+1)\omega\theta^n}{\xi^2} = 0 \\ \frac{{\rm d}\omega}{{\rm d}\xi} = \xi^2\theta^n

1番目の式を2番目の式に代入して \xi^2/\{(n+1)\theta^n\} をかければ
\Large \xi^2 \frac{{\rm d}\theta}{{\rm d}\xi} + \omega = 0
ξ で微分して3番目の式を代入して \xi^2 で割れば

\Large \frac{1}{\xi^2} \frac{\rm d}{{\rm d}\xi} \left(\xi^2 \frac{{\rm d}\theta}{{\rm d}\xi}\right) + \theta^n = 0

この最後の式をレーン=エムデン方程式 (Lane-Emden equation) と言う。