2012-01-01から1年間の記事一覧

水星の近日点移動(3)

水星の質量を m として、 の単位系を使う。 太陽の質量を M として、水星の軌道をシュヴァルツシルト時空 での測地線とする。 は太陽のシュヴァルツシルト半径(普通の単位系では )。ドットを s での微分、 として、前々回の結果から測地線の方程式は で求め…

水星の近日点移動(2)

近日点移動の計算をするとき、教科書ではシュヴァルツシルト(Schwarzschild)時空の計量から始めるのが普通だ。 で、今まで勘違いしていたのだが、アインシュタインの計算もシュヴァルツシルト解を使っていると思っていた。でもよく考えると、一般相対論は191…

素数の因数分解

T_NAKAさんのところにあった問題 6で割って1余る素数の分解 T_NAKAの阿房ブログ/ウェブリブログ を考えてみた。素数 を正整数 で という形に表せという問題。 を 1 の原始3乗根として だから、 を で分解すればいい。まず の場合。 いきなりだが を で計算…

水星の近日点移動(1)

観測される水星の近日点移動に、ニュートン力学によって計算される値から、1世紀に40秒程度のずれがあることは19世紀から知られていた。このずれをアインシュタインが1915年に一般相対論によって説明したのは有名な話。 この計算は昔やったことがあって簡単…

夏希が誕生日から曜日を計算されてたんだけど

日付から曜日を計算する方法。またツェラーの公式(Zeller's congruence)ネタ。前に 健二が日付から曜日を計算してたんだけど で書いたんだけど、もう少し覚えやすい方法を思いついた。月に関するところを変えただけだが。 とりあえず、今回の記事だけ読んで…

電子の異常磁気能率(8)

電磁形状因子の物理的意味を見ておく。 電子の異常磁気能率(4) - 計算用紙 の(6)式の証明と同じ計算で が分かる。これを変形して これを前回の(1)式 に代入すれば 波括弧の中の第1項は荷電スカラー粒子のときにも出てくるのと同じ形のもので、観測される電子…

電子の異常磁気能率(7)

順番が逆だが、今まで飛ばしてきた物理の話に戻る。 電子の磁気能率は頂点関数 に外線の因子を掛けた から求められる。 は の形をしていて、 は について2次以上の項だ。これまでこの を最低次の のオーダーで計算してきたのだった。 はその形から、電子が電…

電子の異常磁気能率(6)

前回 まで計算したのだった。 あとは x の積分を計算すればいい。被積分関数の中の λ は赤外発散の正則化のために入れたもので、最終的に λ→+0 とするのだが、今の場合はここでいきなり(というか最初の最初から) λ=0 としてしまってもいい。 しかし λ→+0 で…

デルタ関数についての定理?

クーロン散乱(5) デルタ関数の2乗 - 計算用紙 で のとき と書いたのだが、T_NAKAさんからトラックバックを頂いた記事 δ関数の性質を考える(1) T_NAKAの阿房ブログ/ウェブリブログ を見ていて、どうもよく理解していないことを書いてしまったことに気がつ…

電子の異常磁気能率(5)

前々回は まで求めたのだった。 これから前回定義した で変形していく。 上式の2項目は、係数は無限大に発散しているが、 に比例した項なので落ちてしまう。 被積分関数の分子の行列を展開すると これの各項をそれぞれ計算する。第1項 ふたつ目の等号のとこ…

電子の異常磁気能率(4)

これから必要になるスピノル関係の公式を証明しておく。まず縮約公式。 (1) は前回示したから (2), (3) を示す。(2) 第2項に (1) を使って (3) 第2項に (2) を使って これから を外線の因子のスピノル で挟んだ を計算することになる。 をいちいち書いてると…

電子の異常磁気能率(3)

前回の最後の式の積分順序を入れ替えると 分母の波括弧の中を k について完全平方する。 途中で であることを使った。これは p, p' が質量殻条件 を満たしていること*1から従う。証明はこの記事の最後で。 の項を落とせば は となる。省略していた を復活さ…

電子の異常磁気能率(2)

前回 まで計算したのだった。なんで の計算をしているのかは後回しにして、計算を続けよう。これからの計算には p, p' の代わりに を使うのが便利だ。p, p' について解くと これを に代入して 分母の一部を変形する。q の成分について2次以上の項は今の計算…

電子の異常磁気能率(1)

電子の異常磁気能率は、1948年、シュウィンガー(Schwinger)によって、微細構造定数 α の最低次で と計算された。この計算をやってみよう。 異常磁気能率とはなんぞやとかファインマン則の説明とかは、教科書かよそのサイトに譲る。 として、計量テンソルは …

非線形振り子

ある計算をしようとしていて、途中で非線形振り子の問題を解く必要が出てきた。 見る人が見ればもとの問題は見当がつくかもしれない。ドットで時間微分を表すとする。 n>2 として、次の微分方程式を考える。 初期条件は t=0 で として、最初に となる時刻を…

13日が金曜日になる確率

初めて聞いたとき意外だったのだが、13日は金曜日になりやすいという話がある。結構有名な話らしくて、結果を載せてるサイトは多いのだが、プログラムで総当りしてるものしか見つからない。手計算でも簡単にできるのでちょっとやってみる。 m を整数、n を正…

健二が日付から曜日を計算してたんだけど

(追記:ほとんど同じだけど、後日書いた記事「夏希が誕生日から曜日を計算されてたんだけど」のほうが少し簡単だから、そちらを読んだほうがいいだろう)映画サマーウォーズの冒頭で、主人公の健二がから曜日を計算するシーンがある。サマーウォーズにはまっ…

時間に依存する摂動論

クーロン散乱(2) - 計算用紙 の最後の式は、時間に依存する摂動論の1次の項をとったのだが、回り道してたので、もう少し短い導出を与えておく。やることはほとんど同じ。 今回は状態ベクトルは全てシュレーディンガー表示とする。ハミルトニアンを として、 …

クーロン散乱(5) デルタ関数の2乗

ここまで思った以上に長くなってしまったが、なんでクーロン散乱の計算をしたかと言うと、実はデルタ関数の2乗について書こうと思ったからなのだ。前回の計算でデルタ関数の2乗の出てきたところはどこだったかというと、 を ( として、 のフーリエ変換を と…

クーロン散乱(4)

前回の結果を使って散乱断面積を計算しよう。 散乱断面積は、要するに的(まと)の大きさで、的に当たった粒子が散乱されると考えればいい(もちろん本当に的があるわけじゃないけど)。全散乱断面積を σ とする。 初期状態の運動量を p としたので、実験家にと…

クーロン散乱(3)

時刻 -T で、運動量 、エネルギー の平面波状態にあった粒子がポテンシャル V で散乱されて、時刻 T で 運動量 、エネルギー の状態に見つかる確率は で、A は というところまで計算したのだった。 今回は A の計算の続き。V を以下のような湯川ポテンシャル…

クーロン散乱(2)

前回の結果から、時刻 -T で の状態にあった粒子がポテンシャルで散乱されて、時刻 T で終状態 で見つかる確率は として、 を計算すればよい。 の頭の帽子は演算子の意味。今回は演算子には帽子を乗せとく。 を1辺 L の立方体で周期境界条件を満たすように規…

クーロン散乱(1)

量子論でクーロン散乱(またはラザフォード散乱)の計算をしてみる。(これと次の記事は回りくどいから 時間に依存する摂動論 - 計算用紙 で計算しなおした。) とする。 ハミルトニアン H を とする。 は自由粒子のハミルトニアン、V はポテンシャル項。 自由粒…

tan(3π/11) + 4sin(2π/11)

これも以前某所に書き込んだもの。 表題の式を計算する問題で、別に難しくはないが、初めて見たときはなんでこんな値になるのか結構驚いた。 三角関数の公式でひねり回せば解けるのだが、別の角度から眺めてみる。p を素数として、g を p の原始根、x を 1 …

こういうことでしょうか

「量子エネルギーテレポーテーション」 東北大学大学院理学研究科 堀田昌寛 http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1658-11.pdf について、kafukaさんから質問を受けた。とりあえず を求めるとこまで計算式だけ書く。 詳しくは論文…

量子エネルギーテレポーテーション(3)

前回までで計算は済んだのだが、今回は計算してきたことの意味を考えてみる。A の測定による波束の収縮はエネルギーも情報も伝えないはずだから、B だけを見ている限り、A での測定の前後での変化は見られない。エネルギーに関しては計算したところ、 の期待…

小澤の不等式の導出

Masanao Ozawa, Physical content of Heisenberg's uncertainty relation: Limitation and reformulation http://arxiv.org/abs/quant-ph/0210044 を読んでみた。 とりあえず今回は小澤の不等式の導出だけ。以下、記法は論文とは全く違う。A, A', B, B' をエ…

チャンドラセカール限界(3)

前回求めたレーン=エムデン方程式 を解くことにしよう。この方程式は2階の微分方程式なので、初期条件がふたつ必要だ。θ の定義から なので、中心 ξ=0 で θ=1。 また、星の密度分布はなめらかなはずだ。特に星の中心での密度勾配 gradρ は連続でなければなら…

チャンドラセカール限界(2)

前回、縮退物質の状態方程式 が求まったので、これから星の構造を記述する方程式を求める。しばらくの間、これを少し一般化して として議論する。 n をポリトロープ指数 (polytrope index) と言う。最初の式は n=3 の場合。星を球対称として、星の中心からの…

量子エネルギーテレポーテーション(2)

前回は A の x方向のスピンを測定をしたところまでだった。 測定直後の状態は測定値 α(=±1) に応じて になる。 ここまでは特に変わったことはない。この測定値 α を B のところ(にいる人)に古典的な通信手段で送る。通信は十分速く、系の状態は測定直後から…