小澤の不等式の導出
Masanao Ozawa,
Physical content of Heisenberg's uncertainty relation: Limitation and reformulation
http://arxiv.org/abs/quant-ph/0210044
を読んでみた。
とりあえず今回は小澤の不等式の導出だけ。
以下、記法は論文とは全く違う。
A, A', B, B' をエルミート演算子として
と仮定する。
で ΔA, ΔB を定義すると(Δ は標準偏差の意味で使うことが多いが、ここでは演算子の差とする)
を使って
だから
最後の項を移項して
両辺 と で挟み、 の平均値 を と書くことにすれば
絶対値を取る。
三角不等式より
エルミート演算子 X の標準偏差を σ(X) と書くことにする。ケナード・ロバートソンの不等式
を使えば
エルミート演算子 X の二乗平均の平方根 (root mean square) を rms(X) と書くことにする(この書き方は他では通用しない)。
なので
これを (1) に使えば
ここまで仮定したのは、[A',B']=0 だけだ。この条件さえ満たしていれば、任意のエルミート演算子 A,A',B,B' と任意のベクトル |ψ> について、この不等式は成立する。
(2)式を小澤の不等式と呼んで構わない気がするが、論文に従って具体的な状況に当てはめる。
最初の時刻を 0、測定の時刻を Δt とする。測定対象の粒子のハイゼンベルク表示の位置と運動量を Q(t), P(t) とする。この粒子にプローブ粒子をぶつける。プローブ粒子のオブザーバブル(メーターオブザーバブル)を M(t) として、直接には M(Δt) を測定することで、間接的に Q(0) の測定をしたと考える。位置の測定が正確なら M(Δt)=Q(0) だ。
(2)式で
とする。
M(Δt) と P(Δt) は異なる粒子のオブザーバブルだから で、(2)式を導いた仮定は満たされている。
だったから
をそれぞれ単に と書いた。
位置の測定誤差 ε(Q)、運動量の擾乱 η(P) の Ozawa による定義は
だ。
あとは同時刻交換関係 から明らかな式
を使えば
これが小澤の不等式。