クーロン散乱(1)
量子論でクーロン散乱(またはラザフォード散乱)の計算をしてみる。
(これと次の記事は回りくどいから 時間に依存する摂動論 - 計算用紙 で計算しなおした。)
とする。
ハミルトニアン H を
とする。 は自由粒子のハミルトニアン、V はポテンシャル項。
自由粒子が V によって散乱される問題を考える。
シュレーディンガー表示の状態ベクトル に対して、相互作用表示の状態ベクトル を
で定義する*1。以後も添え字のない状態ベクトルは相互作用表示のものとする。
相互作用表示の状態ベクトル の満たす方程式を求めよう。
とすると
ここまでは何も近似はしていない。
上の微分方程式を |ψ> について解きたいのだが、|ψ> が両辺に現れているので、厳密に解くのは難しい。
しかし、 の初期状態を とし、V を小さな摂動と見ることができれば、 も小さいので、 はゆっくり変化し、 は小さい項と見なせる。この小さな項同士の積 をざっくり無視すれば
と近似できる。
最初の時刻を -T とする。時刻 T での状態 は、上の方程式を初期条件 で積分して
第1項は入射波がそのまま抜けてきたものに対応するので、散乱波は第2項だ。
括弧の中の演算子はS行列と呼ばれたりもする。
*1:この書き方は分かりづらかったかも。 も も時間に依存する。時間依存性をあらわにして などと書けば、 という意味。