tan(3π/11) + 4sin(2π/11)

これも以前某所に書き込んだもの。
表題の式を計算する問題で、別に難しくはないが、初めて見たときはなんでこんな値になるのか結構驚いた。
三角関数の公式でひねり回せば解けるのだが、別の角度から眺めてみる。

p を素数として、g を p の原始根、x を 1 の原始 p 乗根とすると
\LARGE \left(x - x^g + x^{g^2} - x^{g^3} + \cdots + x^{g^{p-3}} - x^{g^{p-2}}\right)^2 = (-1)^{\frac{p-1}{2}} p \hspace{50pt} (1)
が成り立つ。
これの証明は難しくないが、うまく書けないから認めてしまうことにする。

p=11 とする。11 の原始根として g=2 をとる。
\LARGE x = {\rm e}^{\frac{6\pi {\rm i}}{11}} = \cos\frac{6\pi}{11} + {\rm i}\,\sin\frac{6\pi}{11}
とするが、しばらくは x が 1 の原始 11 乗根であることしか使わない。
(1) にこれらを当て嵌めれば、
\Large \left(x - x^2 + x^4 - x^8 + x^{16} - x^{32} + x^{64} - x^{128} + x^{256} - x^{512}\right)^2 = -11
mod 11 で
\Large 16\equiv 5,\; 32\equiv 10,\; 64\equiv 9,\; 128\equiv 7,\; 256\equiv 3,\; 512\equiv 6
だから、x^{11}=1 を使って
\Large \left(x - x^2 + x^4 - x^8 + x^5 - x^{10} + x^9 - x^7 + x^3 - x^6\right)^2 = -11

上の式の括弧の中は、2項だけを除いて、x の奇数次の項の符号がプラス、偶数次の項の符号がマイナスになっているという「特殊事情」がある。これを利用して括弧の中を簡単な形に変形できる。

\Large x - x^2 + x^4 - x^8 + x^5 - x^{10} + x^9 - x^7 + x^3 - x^6\\ = (x-x^2+x^3-x^4+x^5-x^6+x^7-x^8+x^9-x^{10}) + 2(x^4-x^7)
等比数列の和の公式を使って
\Large =\frac{x-x^{11}}{x+1} + 2(x^4-x^7)
第1項の分子分母に x^5 をかけて
\Large =\frac{x^6-x^{16}}{x^6+x^5} + 2(x^4-x^7)
x^{11}=1 を使って
\Large =\frac{x^6-x^{-6}}{x^6+x^{-6}} + 2(x^4-x^{-4})

ここで、上の x の値を使えば、
\Large \frac{x^6-x^{-6}}{x^6+x^{-6}} = {\rm i}\,\tan\frac{36\pi}{11} = {\rm i}\,\tan\frac{3\pi}{11}\\ 2(x^4-x^{-4}) = 4{\rm i}\,\sin\frac{24\pi}{11}= 4{\rm i}\,\sin\frac{2\pi}{11}

以上から
\Large \left(\tan\frac{3\pi}{11} + 4\sin\frac{2\pi}{11}\right)^2 = 11

\Large \tan\frac{3\pi}{11} + 4\sin\frac{2\pi}{11} > 0
は明らかだから、結局
\Large \tan\frac{3\pi}{11} + 4\sin\frac{2\pi}{11} = \sqrt{11}\hspace{100pt}(2)


以上で導けたわけだが、最初の(1)式が突然降って沸いた理由を書いておく。
tan(3π/11) や sin(2π/11) は 1 の原始11乗根(と虚数単位)の有理式で書ける。
1 の原始 p 乗根 の有理式で \sqrt{p} または \sqrt{-p} になるものは、本質的に(1)(の左辺の括弧の中)しかないことがガロア理論から分かるので、(2)と(1)(の p=11 の場合)は同じことを別の書き方で書いているに過ぎない。